マスゾエ東京都知事が、東京オリンピックまでに東京の「電線」をすべて「地中化」するぞ、と言い始めた。そこで言わせてもらう。
「絶対に無理でございマスゾエ!」
日本の都市の景観にとって、電線・電信柱が「癌」であると、私は言い続けてきたし、これからも言い続けるだろう。ことほどさように電信柱は「醜く・恥ずかしく・愚かしい」物体である。世界中で日本ほど電線や電信柱が我が物顔で蔓延っている国はないであろう。是非ともこの日本から無くしてほしいもののベストスリーに入るものであることは確かだ。更に私は過去に「電線の地中化」は、雇用を創出し、経済を活性化させることが期待できる「最後の公共事業」であると主張してきた。
そのように主張してきたにも拘らず、私はこう言いたい。「絶対に無理でございマスゾエ!」と。
何故無理なのだろう?過去の日本が行なってきた愚かで無計画な地中開発行政に、その原因はある。現在日本中の都市の地中には、一体何が潜んでいるだろうか?水道管とガス管と下水道である。この3つの邪魔者の存在をを抜きには、電線・電話線の地中化は考えることは無理である。つまり本来この3者に、電線・電話線を含めた本格的「共同溝」を作ることが理想なのであるが、現実問題としてそれは実現不可能だ。日本の都会では前3者の網の目が、ほとんど無秩序に、縦横無尽に張り巡らされている。そして共同溝の設置工事においては、これらのライフラインの機能を一時的に止めなくてはならない。それは可能であろうか?否である。故に、共同溝による電線地中化が無理であろうことは誰の目にも明らかである。
そこで次善の方策として電線・電話線のみの「電線共同溝(いわゆるCCボックス)」になるわけだが、その工事をするためにも道路や歩道を「閉鎖」して「通行止め」にする必要がある。東京中で「通行止め」が行われたら、その間東京の経済や市民生活はどうなるであろうか?はっきり言おう。もう遅いのである。2020年の東京オリンピックまでに「全東京の電線を地中化」するのは「夢」に過ぎないのである。故に私は断言したいと思う。「マスゾエさん、それは無理ですよ」と。尤も、マスゾエ自身どこまで本気で言っているのかも怪しいのであるが。
電線地中化は、もっと何十年も早く始めるべきであった。日本がもっと豊かな国であったうちにである。そしてもっと長い目で行なわれなければならない工事であった。おそらく今後100年は掛かる事業であるはずだ。無理に急いだ場合はどうなるか?商店街や商業施設からは間違いなくクレームが出る。何故なら工事期間中、店の前の歩道が通行止めになるからだ。商売は上がったりになる。東京中が一斉に道路工事を始めたらどうなるか、考えれば分かりそうなものである。
はっきり言ってマスゾエは考えが甘い。東京オリンピックまでにはもう6年も無いのだ。いくら努力をしてみたところで地中化はせいぜいオリンピックの会場周辺や、選手村周辺、それに繁華街のほんの一部程度に終わることは目に見えている。横丁や裏通りは相変わらず電線・電柱林立のままであろう。マスゾエの「大風呂敷」はおそらくその程度で終わるに違いない。しかし「電線地中化」を嘘でもいいから言い始めたということだけは評価しても良いだろう。欧米かぶれと言われようが何しようが、マスゾエ知事には頑張ってもらいたいものだ。「国際都市」に電信柱が似つかわしくないものであることを都民にもっと知らせてほしいものだ。