本来なら決まって「猟奇殺人」が起きそうな、アメリカ西部砂漠の田舎町が舞台の映画だ。ハリウッドが近い設定となっている。
口うるさいブレンダという黒人の経営者とその夫、娘と息子夫婦が働いているモーテル兼カフェ。従業員や地元の警官はインディアンだ。息子は暇さえあればピアノの練習に明け暮れている。モーテルの敷地内には元ハリウッド舞台芸術家の画家(ジャック・パランス)がトレーラーハウスに住んでいる。モーテルには女刺青師が長逗留している。バッグパッカーの青年が敷地内にテントを張らせてほしいというと快く承諾するブレンダ。商売っ気というものがないブレンダのせいで、カフェもモーテルも荒れ放題。
そこへ旅行中のドイツ人女性(ジャスミン)が、夫と喧嘩をして(後段では離婚するらしい)そのモーテル兼カフェにたどり着く。ジャスミンはブレンダが買い物に行っている間にモーテルや事務所を掃除してピカピカに磨き上げるが、ブレンダはそれが気に食わない。ライフルまで持ちだしてジャスミンを非難する。ライフルが出てくるあたり、やっぱりアメリカだ。ちなみ映画そのものは西ドイツの製作である。
そのモーテルでのいろいろな出来事、ブレンダとジャスミンの確執から和解が描かれている。後半、ジャスミンの機転の効いたアトラクションで、カフェは大いに流行り、千客万来となる。
とにかく「悪人」というものが出てこない「善意のカタマリ」のような映画で、見終わったあとには何とも言えないほのぼのとした、ゆったりとした気分になれるのである。準主役(ルーディ・コックス)のジャック・パランスが、とにかくいいのだ。彼がジャスミンにプロポーズするシーンが物語の最後だ。不器用で誠実な男の姿が上手に描かれている。実にカッコイイ幕切れだと思う。
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