2013年12月18日

胆のう摘出手術譚


激痛で二度も入院するハメになった、その原因を作った我が「胆のう」を、切除することになった。入院そのものは二度経験したが、今回は三度目で真打ち登場。いよいよ手術である。

「結石」といえば「腎臓」がポピュラーである。こちらも七転八倒の激痛があるが、腹をくくってビールを2〜3リットル飲んで尿を排泄するだけで、九部九厘は治ってしまう。腎臓結石は、ビールこそが特効薬だ。胆のうに比べて、はるかに「良性」な病気と言える。この度はそうは行かない「胆のう結石」である。今回はその「胆のう切除手術」における一部始終を書いてみる。

受難その1.
最初に、点滴用の針を左腕に刺す。うら若い女性の看護師がやってくれる。「遠慮せず、練習台にしてもいいよ」などと、軽口を叩いてみたものの、いざ刺してもらうと、痛みが尋常ではない・・・。どう考えても血管ではなく「筋肉」を貫いた感触。「あの・・・先輩呼んだら?」と私。やって来た先輩看護師もまだ若い。予感は当たった。案の定またしても「筋肉注射」になってしまう。三人目の「助っ人」は、ちょっと年配の女性看護師で、一発で成功。二人になった時に「なんで最初からあなたが来なかったの?」という私の問いに、彼女「今日は、たまたままぐれで上手く行っただけ」とのこと、言うことが奥ゆかしい。

そして「毛剃の儀式」。どうしてこの儀式は、若くて可愛い女性がやるのだろう?私の腹の上を滑る安全剃刀のくすぐったさに、私の腹筋は、激しく波打つのであった。

受難その2.
鼻から胃にチューブを通す。手術中に嘔吐して吐瀉物が気管に入らないようにするため、とのこと。これはかなり苦しい。もっと手術の直前に、挿入すれればいいように思うが、いくらかでも違和感に慣れるためかも知れない、がどうだか分からない。これは、術後、抜いた後もかなり不快感が残る。

いよいよ手術の準備だ。足部を強く圧迫する「弾性ストッキング」を穿く。これは「静脈血栓」いわゆる「エコノミークラス症候群」予防のためだと言う。さて次に、小さなかわいい、まるで女性用のセクシーな「パンティ」を見せられ、それに穿き替えさせられる。先程から、これまた「眉目秀麗」な美人看護師がそばに付いている。「なんだかAV女優になった気分です」と、思わず言おうとして止めておいた。あとで同じことを付添人に言ってみたら、案の定無視された。言わなくてよかった。最後に、かっぽう着のような手術着を着て帽子をかぶれば準備完了。車いすで手術室へと運ばれる。

何重かの扉を抜けて手術台へと運ばれる様は、その昔見た「ベン・ケーシー」のタイトルシーンを思い出させる。確かそんなようなワンカットの始まりだった気がする。手術室では、リラクゼーションのための音楽が小さく流れており、事実この音楽には精神を落ち着かせる効果があったように思う。最近はこのような病院が増えているのだろう。良いことだ。執刀医も含めて、麻酔医など4〜5名の女性に、男性スタッフは二名である。男性スタッフは、少し下がった位置に居り、研修か見学のようだった。執刀も麻酔も女性である。ちなみに今回の手術は「腹腔鏡手術」である。

受難その3.
私としては、この受難が一番の「恐怖」であった。手術部位へ局所麻酔をするための「脊髄へのカテーテルの挿入」である。手術中、また手術が終わった後も、引き続いてカテーテルをつないでおいて、そこに麻酔薬を注入する、そのための施術だ。まず、脊髄そのものへの「局部麻酔」が注射される。それが済んだら、カテーテル用の太い針を刺すわけだが、この時、思わぬ激痛が走った。その旨を訴えると、一旦カテーテル用の針を抜いて、脊髄への麻酔薬を追加注射。再びカテーテル用の針を入れる。そしてカテーテルの挿入は無事終了。針そのものは抜かれて、細いカテーテルのみが、脊髄に残ることになる。一ミリにも満たないようなチューブに、螺旋状の金属が埋め込まれていると説明を受けた。これにより、管が外圧で潰れて「不通」になることは無い、とのことだ。医療技術の発達に、改めて感心させられた。

最終的には、各種カテーテルや心電図用のコードなどで、体全体が「タコ足配線」のようになってしまった。「何だかウチのデスクトップ・パソコンになった気分です」と、一応感想を述べて見たが、反応はイマイチであった。これを最後に、点滴針から「全身麻酔」の薬が血管中に入れられて、意識は遠のいていく。手術中は、何か夢を見たような気もするが、覚えてはいない。実はこの麻酔中に「受難その4」があったのだが、それは割愛する。その「受難」とは「尿道へのカテーテル挿入」である。もし意識のある状態だったならば「受難ベストワン」になっていたと思うのである。

「終わりましたよ」という声が聞こえて目を覚ました。執刀医(主治医)は、切った胆のうを見せてくれた。非常に「活きの良い牛のもつ焼きのネタ」のように見える肉片であった。そのあと個室病室に戻ってから、主治医は取れた「石」を持って来てくれた。フイルムケースのような容器に入った「結石」は、見た目も大きさも「正露丸」にそっくり。私の意識下では、どういうわけか「白い」ものだとばかり思っていたが、意外にも真っ黒であった。

以上私が「眉目秀麗」「美人」「可愛い」と皆さんに訴えてきた看護師さんの多くは、マスクをしたうえでの感想であることを一言お断りしておく。しかし、主治医には素顔で何度も対面している。年の頃は三十そこそこ。メガネを掛けた美人である。とにかく、いまどき風で若い(と思う)。

私が定期的に病院に来るたびに行きつけている居酒屋が何軒かある。そのうちの一軒で飲んでいると、先生が同僚の女性二人とお店に入ってきたことがある。少しだけ挨拶をした後、テーブルで三人で飲んでいるさまは、ちらりと見ると、ごくふつうのOLの「女子会」のようだった。一体何の話を肴に飲んでいるのだろう、と思った。さて次はいよいよ、最後の受難だ。

受難その5.
腹腔鏡手術による胆嚢摘出では、腹部に4つの穴を開ける。
@右脇腹上部に一箇所
A右脇腹下部に二箇所
Bへそのすぐ横に一箇所
以上である。@からはドレーン用のカテーテル(パイプ)を挿入する。Aからは、それぞれ鉗子と電気メスを入れる。Bからはモニターにつながったカメラが挿入される。で、手術後は、他の傷は塞がれるわけだが、ドレーン用の@だけは、ドレーンチューブが挿入されて状態のままである。手術直後は麻酔が効いているので気が付かないが、後になって鈍痛がでてきた。更に一般病棟に戻って、トイレに行ったり何やらで起き上がるときに「激痛」が走るのだ。これが「第5の受難」である。その激痛の原因は、自分でも容易に察しがついた。横隔膜がドレーンチューブに当たっているのだ。そしてチューブが傷口を刺激して、それが激痛を発するのだ。この状態ではまず「深呼吸」というものが出来ない。いわゆる「腹式呼吸」が困難なのである。「胸式呼吸」をあまりしたことのない私には辛い。小刻みな腹式呼吸をすることになる。

手術翌日の夜には、痛みが激しく、痛み止めの点滴をしてもらった上、経口睡眠薬を飲んで寝た。もし、アメリカで、こんな手術をしたら一体費用はいくらぐらい掛かるのだろう、などと今後の我が国のことを思いながら寝た。

余談だが5〜6日、酒を断っていると、口寂しくなり、甘いモノが欲しくなる。車いすで一人で、売店にチョコレートを買いに行く。ロッテガーナチョコやチョコバーなど、5種類買った。ラミーチョコが食べたかったのだが無かった。チョコバーを食べるのはおそらく30年ぶりくらいかも知れない。子供の頃、明治製菓のチョコバーで「トーストココナツ」と「生ココナツ」の二種類があって、石坂浩二が宣伝していた。美味しいので毎日のように食べていたことを思い出した。また発売しても売れると思うのだが。

脊髄に挿入していたカテーテルを抜き、遂にはドレーンチューブを抜いた。ここまで来れば快復はどんどん加速してくる。さて、これでまた脂っこいものが遠慮無く食べられる。何から食べようか?



posted by takashi at 20:27 | Comment(3) | TrackBack(0) | その他雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変でしたね。お疲れ様です。 (どうしても書かずにいられませんが)飲みすぎに注意して養生なさってください。手術のレポートはこれで打ち止めとなりますように。
Posted by アマヤ at 2013年12月18日 21:50
ハヨ いってまえ、バカサヨ。
Posted by いっぱんじん at 2013年12月18日 22:53
アマヤさん、お気遣いに感謝します。

さっそくですが、昨日退院祝いに2軒ほどハシゴをして返ってきましたら、夜半から激しい下痢をおこしました。まだ体調が戻っていないのにアルコールはやはり早すぎたかな、とも思います。胆のうが無くなる、ということが、人間の食生活に、どのような影響をもたらすものなのか?ちょっと調べてみることにします。
Posted by たかし at 2013年12月19日 10:34
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