2013年03月24日

TPPは、農業問題でもなければ、関税問題でもない〜その2

TPPとそのISD条項の危険性については、エントリー<TPPは、農業問題でもなければ、関税問題でもない>で書いた。
http://takashichan.seesaa.net/article/331719759.html?1363525111

評論家の田岡俊次氏は、先日パックインニュースで、次のようなことを言っていた。「銃刀法」があるから、日本では銃が売れない。TPPに参加すれば、これを「非関税障壁」として「廃止」せよ、とアメリカの銃器産業が、日本に圧力をかけてくる可能性がある、と。実はこれは「笑い事」ではない。お隣の国、韓国では、米韓FTAに伴って、既に60ほどの法律が「非関税障壁」として、アメリカから「改正」を求められているという。当たり前といえば当たり前なのだが、TPP(FTA)は「国際条約」であるため、当事国の国内法(憲法含む)よりも「上位」に位置するのだ。しかし、FTAに伴う「守秘義務」により、これらは韓国国民には明らかにされていないという。

韓国の「低炭素車協力金制度」が、アメリカの「横槍」で、導入先送りになった件は唯一、韓国国内でも明らかにされたものであるが、日本のマスコミでは敢えて報道されず、伏せられている。この制度は「温室効果ガスの排出量を減らす目的で、CO2排出量が少ない軽・小型車の購入者に50万〜300万ウォン(約3万8000〜22万7000円)の補助金を支給し、逆に排出量が多い中・大型車には50万〜300万ウォンの負担金を課すというもの」(しんぶん赤旗)である。

何故、導入を先送り(事実上の見送り)にせざるを得なかったといえば、この制度を「導入」してしまえば、将来アメリカによりISD条項で必ず訴えられ、韓国が「損害賠償」を請求されることが「確実」だからだ。このことは、例えば日本における「エコカー減税」などが、間違いなく「非関税障壁」と見做されることを意味している。

TPPによって、非関税障壁として「改正」が求められることが予想される法律は、ちょっと考えただけでも、建築基準法、道路交通法、社会福祉法、放送法などが挙げられるが、特に国民の福祉・教育・医療など、基本的人権に関わるものが、根こそぎ変えられてしまうことが予想される。社会福祉は、現在でも年々その予算は減らされ続けているが、今後はTPPとの関係で、より「自主規制的に」縮小されていくだろう。

法律だけではない。「文化」「生活慣習」の類までもが「非関税障壁」とされる。例えば、自動車の輸出入に関わる、文書やマニュアルが「日本語」表記でないといけないのは「非関税障壁」だ。日本の公用語を英語にしろ、などの理屈も成り立つことになる。TPPの本質は、一言で言うと「アメリカナイズ」なのである。最終的には、その国の「法律」「制度」「文化」「慣習」を、アメリカのそれに変えてしまうのが「狙い」だといえる。

何故こういうことになるのか?理由は簡単で「裁定」にあたる「国際投資紛争解決センター」が「世界銀行」の傘下にあり、その世界銀行を、アメリカが牛耳っているからだ。しかし、ISD条項がより恐ろしいのは、これがあるために、当事国が、自ら進んで「自己規制」を行なうことにあるだろう。つまりISD条項にふれる可能性のある法律を、アメリカに言われるまでもなく、自ら「廃止」「改正」することに、あるいは「改正しない」ことになるだろう。この「自己規制」という名の「見えない強制」は、現在の日本の報道界、放送界などに見られるとおりのものだ。

日本が何故、韓国という「身近な被害者」に学ぼうとしないのか?これはまさに謎である。と、言いたいところだが、実は「謎」でもなんでもない。TPPによって「私腹」を肥やすごく一部の人間と、アメリカから身分と生活を保証されたごく一部の人間が、マスコミを支配し、その実態を国民に知らせないようにしていることは、ほぼ明らかだ。日本という国は、残念ながら現在そのような仕組みにできている。

ちょっと話が横道に逸れるが、先週から「東京MXテレビ」の「ニッポンダンディ」という番組で、岩上安身氏の曜日に、岩上氏に「敵対」する立場のコメンテーターを、彼と一緒に出演させることになったらしい。何と、次回は「原発御用学者」の中川恵一を出すようである。おそらく、「原発・TPP反対派」岩上氏の発言時間を、大幅に「削る」のが目的であろう。このようなマスメディアにおける岩上氏の発言は、大変に貴重なものであり、その氏が比較的自由に発言できる番組というのも貴重であるが、過去において彼はTPP発言が元でフジテレビの番組を降ろされた経験がある。今回の「東京MXテレビ」も、おそらく岩上氏の「降板」の前触れではないかという気がする。同じく、吉田照美の「ソコトコ」や「夕やけ寺ちゃん活動中」も、4月から没になるらしい。まさに「文化放送よ!オマエもか!」の観がある。これは、明らかに、TPP反対論を押し込めるための、文化放送上層部による「自主規制」だと思われる。テレビ朝日、玉川徹の「そもそも総研」では、以下の放送の翌週から、コーナーが廃止されたようだ。

「そも.そ,も今からTPP交渉参加しても心配事が消えないんじゃないの?2-1」
http://www.youtube.com/watch?v=j5lUk8K-VEA
「そも.そ,も今からTPP交渉参加しても心配事が消えないんじゃないの?2-2 」
http://www.youtube.com/watch?v=5Ip936ZKi5I

また、以上の裏側については、孫崎享氏の以下のブログをご覧いただきたい。
「大西英男議員の衆議院での私への批判」
http://p.tl/nDOi

今考えているのは、このTPPというのは、アメリカの「西進侵略」の「仕上げ」ではないか、ということである。アメリカの侵略とは、自国先住民の西への侵略に始まり、アラスカ、ハワイ、フィリピン、グアムと続いてきたわけだが、これらは、時に「武力」により、時に「懐柔」により、極めて粗暴かつ狡猾に行なわれてきた。ここへ来てアメリカは、日本や韓国を「合法的に」属国化しようとしているのであり、その「ツール」がTPPやFTAであると考えられるのだ。一体中国は今、日本や韓国の、この「混迷」をどんな目で見ているのか、大変に興味深いところがある。

何となくTPPが、最終的にもたらすものは「戦争」ではないか?と私には思えてきた。



 

posted by takashi at 20:35 | Comment(9) | TrackBack(0) | 時事、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しかしTVでは本当にこの手の本質論議が全く行なわれずに
諸手を挙げてのTPPマンセーしか聞こえて来ないのは恐ろしいですな
唯一、IWJが孤軍奮闘しておられるようですが、
如何せんミニコミでは太刀打ち出来ないでしょう。
アベノミクスもこれを織り込み済みの目晦ましなんでしょうな

TPP交渉は既に終えていて、日本政府も了承済みだというのに、
大嘘つき安倍ちゃんを今こそ“売国奴”と叩くべき愛国者共は
虚言の笛を吹いている男に付いていくみたいですよ。
溺死するまで
Posted by 半半 at 2013年03月24日 20:54
半半さん、

私が上で述べた「自主規制」は、もう既に始まっているようです。先週から「東京MXテレビ」の、岩上安身さんの曜日に、岩上さんに「対決」する立場のコメンテーターを、彼と一緒に出演させることになったようです。何と、来週は「原発御用学者」の中川恵一を出すようです。おそらく、岩上さんの発言時間を、大幅に「削る」のが目的でしょう。

吉田照美の「ソコトコ」や「夕やけ寺ちゃん活動中」も、4月から没になるらしいですから、私に言わせれば「文化放送よ!オマエもか!」という感じがいたしております。これは、明らかに、TPP反対論を押し込めるための、文化放送の「自己規制」だと思います。(以上はエントリーにも加筆しておきました。)
Posted by たかし at 2013年03月24日 21:13
返信ありがとうございます。

東京の状況はIWJを応援するツィッターで情報を得ております。
ラジオのほうは最近は便利な事に、
スマホにRazikoをインスコすることで全国のラジオを聴く事ができ、
吉田照美の「ソコトコ」や「夕やけ寺ちゃん活動中」は聞いております。
春の改編で無くなったり岩上氏が出なくなるのは残念です。

しかしこの改編、大阪では2009年春の改編から
リベラル的な、若しくは現政権や宗教団体を茶化したりする
TV・ラジオ放送が終了となっております。
(例:誠のサイキック青年団  ムーブ)

最近、特に酷いのが毎日放送(TBS系列)。
TPPに関しては、毎日放送TV・ラジオに出演の論説・解説委員の全員が

TPPに参加しないと日本は終わりだ!

とかなり強い調子で、詳細な論拠を示さず
参加賛成発言を推進してます。
小泉・竹中構造改革には世論も気にせずに
真っ向反対を唱えていた連中とは思えないほどのコロビ具合です。

ラジオの方は、反原発放送として名高い種まきジャーナル(終了)
から移行の“報道するラジオ”ではTPPにはあまり触れない状況。

大阪もジワジワと“自主規制”の網で追い込まれてる状況です。
Posted by 半半 at 2013年03月25日 22:57
米国のマスコミは、日本ほどには腐ってはいないようです。
http://www.youtube.com/watch?v=HLVKAalmD48&NR=1&feature=endscreen
半半さんの言う、ドブネズミの如き愛国者共は、産経が連日報道している「対馬の仏像盗難」という、クソつまらない、どうでもいいような事件に夢中のようです。
Posted by やまだ at 2013年03月26日 00:07
「デモクラシーナウ」ですね。アメリカでも「特殊」な番組だと思いますよ。視聴率は限りなくゼロに近いのではないでしょうか(笑)。

それにしても、アメリカ人はアメリカ人で、日本と同じような心配をしているのが面白いところです。食品添加物や薬価、医療、福祉、遺伝子組み換えなど、日本より自分たちのほうが、よほど酷い状態なのにもかかわらず「加害」ではなく「被害」を心配している(笑)。TPPとは、マトモに考えればそれほどとんでもないものだということですね。
Posted by たかし at 2013年03月26日 09:41
ついに「TPP 車は大幅譲歩」だそうで。
とうとうこの日が来てしまいましたね。
そのうち「日本神話は非関税障壁だから教えちゃだめ」という方向にいっちゃうんでしょうか。
(商業的にどこがいけないのかは存じませんが。神話そのものは嫌いではないのですが「神国日本」は苦手です)
アメリカは日本文化を否定したら戦争に持ち込めるでしょうか?
Posted by りくにす at 2013年04月13日 20:17
りくにすさん、

私は冗談抜きで、将来「日米開戦」ということになるような「予感」がします。
Posted by たかし at 2013年04月13日 20:51
このTPPはもう不可避な気がします。
そもそも年次要望改革書だの構造改革にせよ日本はさんざんアメリカの要求を呑んできていまさら後に引けるわけがないんです。いまさら不参加なんて自民党がやれるわけがない。

案外中国は喜んでんじゃないですか。日本や韓国をアメリカさんが経済的に押さえ込んでくれるんだし。
しかも将来的には在韓、在日米軍基地を引き払うプレゼンスを立てているって話ですし。
Posted by R2 at 2013年04月28日 22:29
TPPで売国したあと、それに加担した人たちはどうするのでしょう。海外へ逃げるんでしょうか。多分そうなんでしょうね。                   たかしさん、わたしは「日米開戦」より「日中開戦」の方が可能性が高い気がします。大東亜戦争の記憶と戦後の長い親米路線で洗脳され、国民も政府もアメリカとは、もう戦争したくない。一方、中国となら勝てた、といまだに思い込んでいる人は少なくない気がします。今の中国の国力と軍事力を侮っています。「特定アジア」に対する優越感を手放したくないために、もともとアヤシイ判断力をさらに低下させるのではないかと心配です。アメリカとしても、日中双方に武器が売れるのですからそのほうが得となる気がします。ま、どちらにしてもお先真っ暗なのは変わりませんが。
Posted by アマヤ at 2013年04月29日 01:43
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