上野駅では毎夕、キオスクで買ったビール、カップ酒、さきイカ、柿ピーなどが入ったビニール袋を大事そうに抱えたお父さんたちが、40分くらい前からホームで「常磐線快速列車」を待っている。列車が入ってくると、素早くボックス席に着く。ボックス席のない、向かい合わせの席の車両の入り口は避ける。その辺のところは、既に頭にインプットされているのであろう。
彼らは、牛久や水戸等に自宅のあるサラリーマン達である。長距離通勤の時間を「有効利用」する、いわばこれは「生活の知恵」なのだ。席に座るやいなや、彼らの「宴」は始まる。まったく違った会社の者同士が、示し合わせて毎日乗り合わせているように私の目には映った。おそらく自然に車内で知り合った「常連」なのであろう、いわば「同好の士」である。酔ってくるから当然、声高になる。若い女性客などはあからさまに嫌な顔をしたりする。これを嫌い、快速には乗らない、という女性もおそらく居るに違いない。しかし、本人達は至って平気である。尤も、それほど酒癖の悪い人は居ないようだ。もし、私が水戸から通っていたなら、絶対に仲間に入っていただろう(笑)。
こういう雰囲気の列車は上野駅の在来線でも、常磐線以外にはない。山手線や京浜東北戦では、さすがにこれをやる人はいないし、同じ長距離電車でも、東北線や高崎線にはないような気がする。ボックス席が無いからかも知れない。
少し「居酒屋常磐線」のご紹介が長くなってしまった。この辺で船橋のおすすめ店の話に変わろう。船橋には「仲通り商店街」というハモニカ横丁があり、そこには飲み屋が集まっている。数ある中でご紹介したいのは「一平」と「加賀屋」であろうか?「一平」は、この界隈では知らぬ者のない赤提灯で、なにしろつまみが安い。一番高い鯨のベーコン、鯨ステーキが450円で、それ以外は200円〜350円といったところ。私は、辛い酢味噌を付けて食べる豚足、揚げ物(メヒカリ、アジ、メンチ等)が好きで、よく注文する。飲み物は、ホッピー、ビール、日本酒など。
吉田類さんではないが、この横丁へ行くと「もうあと2〜3軒」ということになってしまう。続いては「加賀屋」さん。焼き鳥、魚介刺身をメインになんでもある。レバ刺しが新鮮で安い。私が最後に頼むのは、ふぐのひれ酒が多い。行くと必ず飲む。「加賀屋」名物は何と言っても「ハイボール」であろう。かなり焼酎の量が多いので、2杯ぐらいで結構酔う。つまみの選択によってはいわゆる「センベロ」が可能な、数少ない店かもしれない。
飲み屋は、他にもいっぱいあるが、一階の炉端焼き店で飲んでいると、二階のキャバクラのお姉さんがさりげなく誘いに来る◯◯というお店があるので要注意(おそらく経営が一緒)。とは言ってもぶったくりではないからご安心を。更に、この通りには、本格インドカレーの「ガンディー」があっておすすめである。
錦糸町に移る。「丸源」は、南口のすぐ近くにある立ちのみの焼鳥屋である。先ほどの「加賀屋」もそうだが、このあたりの飲み屋は、日曜日は昼間からやっていて、しかもお客の半数は、耳に赤鉛筆を挟み、新聞を持っている。丸井から一本入った通りは、競馬開催日にはお祭り状態になる。博打に興味のない私は、彼らを観察しながら飲むのが好きである。
私の好きなカレーであるが、錦糸町では「タイ国料理 ゲウチャイ」がおすすめ。私は、家でもタイカレーをよく作る。レッドカレーのペーストにココナツミルクの缶詰があれば、意外と簡単にできる。タイの焼きそばは、砂糖がまぶしてあって甘い。そして辛い。誠に意表を突く味である。カレーにも砂糖とレモン汁を必ず入れる。そして大量のチリパウダーだ。錦糸町には、タイ料理を始めいわゆる「エスニック料理」の店が多く、北口には食材店まである。ブラジルからメキシコ、タイ、インド、インドネシア、中華、韓国の食材まであり、スパイスや缶詰のほか、パクチー、レモングラスなどの香草も売っている。インドレストランにしてもそうなのだが、日本では、本格エスニックカレーの店では何故「インディカ米」を使わないのだろう?私が好きで良く行く店も、ほとんどはジャポニカ米を「硬め」に炊く「だけ」という店が多い。放射能の心配のない「タイ米」を、この際もっと普及させるチャンスだと思うのである、如何であろうか?何と言おうがカレーは、間違いなくインディカのほうが美味い。
錦糸町はその昔、世間ではいかがわしい街という印象が非常に強かった(実感なさるためには、笑福亭鶴光の「うぐいすだにミュージックホール」を聞くことをお薦めする)。ところが、再開発で「すみだトリニティーホール」が出来てからというもの、一瞬にしておしゃれな「文化都市」に変貌してしまった。こういう街も珍しいかも知れない。池袋の例もあるが、もともとかの地には立教大学が「文化」の匂いを醸し出していたので比較はできなかろう。いかがわしい場所も「たまにはあった」といったところか。
ところ変わって秋津市。秋津駅からほど近いところにあるのが、立ちのみの焼き鳥「野島」だ。ただし微妙な場所ゆえ住所は東村山市。ここの焼き鳥は美味しい。とにかく焼き鳥の串がでかい(肉が大きいという意味)。馬刺しやレバ刺しも美味いので、いつも満員になる。なにしろカウンターしか無く狭いときているので、はじめのうちはカウンターに対し「平行」の体勢で飲んでいられるのだが、混んでくると45度、60度、そして最後にはカウンターに肩肘ついて90度の角度で立つ。そしてその頃には、飲み物のジョッキは窓の桟の置く、ということになる。ま、一度行ってみれば、私の言う意味が分かるはずだ。JR新秋津の駅から西武線秋津の間の1キロあまりの商店街は、食べ物屋・飲み屋以外にも昔ながらの良い店が多い。西武も、ここには量販店を敢えて出店しない方針なのだろう。活況は今も続いている。ただし、もし両駅が一緒か、接近していたら、この商店街はありえなかったろう。
最後は松戸の「上州屋」。こちらは松戸駅西口からひとつ入った通りにある名店である。何を食べてもハズレということはまずない。ごぼうの天ぷら、レバ刺し、軟骨つくね等。マスター夫婦と、息子さん、マスターの弟さんとで「同族経営」に徹している。最近は息子の大ちゃんの奥さんも、お店でよく見かけるようになった。このあたりはミニ「思い出横丁」とでも言うべき飲み屋街が形成されており、私の場合お約束通り「ハシゴ」と相成るわけである。店の裏手には、妙齢のママさんたちの経営する小さな飲み屋がひしめいている。番外として、松戸には「大都会」があり(池袋にもあるが)、朝までやっている。私は普通、数軒ハシゴしたあと終電を逃したときは、ここで朝まで明かす。マスターは、私が突っ伏して寝ていても文句を言わず、始発の時間になると優しく起こしてくれる。優しいのだ。大概ここで飲み始めてほかへ行くので、その日は2回顔を出すことになるわけだ。
他にも紹介したい店はいっぱいあるが、今日のところはこれまで。
2012年01月25日
東京グルメ紀行その4(都下および近郊)
その昔(私の昔は大体おおまかに10〜30年と思っていただきたい)、名古屋の名鉄金山駅のホームに、縄暖簾の赤提灯があるのにびっくりしたことがある。さすがにこういった店は関東では見かけない(条例で出店できないのかも知れない)。その代わりと言っては何だが、東京上野には「居酒屋常磐線」というものがある。この居酒屋が、他店と違っているところは、お酒・おつまみすべて「持ち込み」であるということだ。
【その他雑感の最新記事】
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック