2010年08月01日

政治評論家・平野貞夫の詭弁

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こいつ


政治評論家・平野貞夫氏とは、元自民党(同時に、元新生党・元新進党・元自由党・元民主党)の参議院議員である。そのインタビューを「晴耕雨読」さんが引用しておられるので、一部ご紹介したい。なぜこんなもののタワゴトを取り上げるかというと、余りに典型的な「詭弁」が、随所に含まれているからである。ただそのためだけに引用させていただく。そうでなければこんなものをまともに取り上げるつもりはない。

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「「小沢の沈黙が意味するもの」 政治評論家 平野貞夫 《特集 自壊する菅政権》」  その他
http://sun.ap.teacup.com/souun/3080.html

(前略)
 消費税が年金崩壊を招いた

 ── それにしても菅氏の消費税発言は、信じられないほど愚かなものだった。
平野 税制を政争の具に使おうという発想が、すでに狂気の沙汰だ。19世紀イギリスの政治学者ウォルター・バジョットが「税制の根本は政治制度を規定する」と述べている通り、税制改革とは政治のあり方そのもの、政治思想そのものの変革なのだ。
 なぜ、消費税に手をつけようとした多くの政権がそのために倒れ、竹下内閣が討ち死に覚悟で消費税導入を断行したか、その歴史と政治思想的意義を菅氏はまったく理解していない。
 戦後、GHQによって税制改革(シャウプ勧告)が進められたが、これは直接税に重きを置くものだった。だが、歴史の必然として直接税中心主義では限界があり、いずれ間接税の導入が必要となることも、当初からわかっていたことだ。
 大量生産・大量消費という経済構造はいつか必ず転換を迎え、選択的生産・選択的消費という成熟した経済構造へ変化する。いわば、経済の中心は企業主体の重化学工業から個人の多様な消費とそれに応じた生産という情報産業へと転換していくことになる。このときに、法人税・所得税という直接税に依存していては税収は必ず破綻する。間接税によって税金の最大の目的である所得再分配を行うことが必要となる。
 竹下内閣に至るまでの歴代内閣は、こうした理念を国民に訴え、消費税がなぜ必要か、時間をかけてコンセンサスを得てきた。当時の大蔵官僚も、税制が政治体制の根幹に関わることだということを理解していた。だが、どうやら菅氏も、菅氏に消費増税を吹き込んだ一部の財務官僚も、まったくこのことが分かっていない。特に財務官僚など、自分たちの失策を消費税を国民から搾り取ることで穴埋めしようという、国敗的発想をしており、それに菅氏が愚かにも乗せられたわけだ。

 実は、私は消費税導入にあたって、衆院事務局で実務を担当したから、消費税の裏も表もよく知っている。正直に言えば、現在の消費税は不完全なものだ。このように不完全な形でしか消費税を実現できなかったことには忸怩たる思いがある。だからこそ、消費税改革は現行消費税が学んでいる問題を解消するものとして議論されなければならないのだ。

 ── 現行消費税の問題とは何か。
平野 大きく二点を上げると、第一に、高所得者より低所得者の税負担が大きくなること(逆進性)、公平さが確保できないことだ。消費税に一律の税率を設けることには反対だ。
生活必需品への税率と毛皮やダイヤモンドのような奢侈(しゃし)品への税率が同じというのはおかしい。戦前には芸者への花代には30%の税がかけられたし、遊郭で遊べば200%の税がかけられた。富裕層が贅沢を楽しみたいのなら、それなりの税を負担してから楽しんでくれ、という「奢侈税」の思想があった。このように、物品によって税率に弾力性を持たせることによって、消費税による所得の再分配を行わなければならないのだ。

 第二は、消費税制度の成立の政治的取引の中で4000億円もの特別養護老人ホーム(特養)への補助金を拠出することになった。それを機に、食料、おしめなど必要物資は特定業界団体を通さなければ特養に納入できない仕組みを厚生官僚に作らせてしまったことだ。この業界団体から当時の小泉純一郎厚生大臣、次の丹羽雄哉厚生大臣らを始めとする厚生労働省へ群がる政治家たちへ資金が吸い上げられていく構造ができてしまった。大変な税金の無駄だ。そしてこれらは厚生官僚が政治家と結託して作ったものだから、政治家たちは厚生官僚に弱みを握られ、何も言えなくなってしまった。この結果、厚生官僚の悪事が放置されることになった。平成八年の岡光厚生次官の汚職事件など、氷山の一角だ。もっと悪いことに厚生官僚は年金を食い荒らした。その結果現在の年金崩壊があるのだ。消費税と年金崩壊は、実は深いところでつながっているのだ。この構造を完全に整理する必要がある。
 逆に、こうした事情を踏まえずして消費税について議論するなど不可能なのだ。
(後略)
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> 戦後、GHQによって税制改革(シャウプ勧告)が進められたが、これは直接税に重きを置くものだった。だが、歴史の必然として直接税中心主義では限界があり、いずれ間接税の導入が必要となることも、当初からわかっていたことだ。
 
「歴史の必然として」「直接税中心主義では限界があり」は何の根拠もない。「直接税中心主義では限界がある」のではなく、そもそも日本の消費税の導入は「所得税の累進性の緩和」および「法人税の減税・特別措置」とセットに「恣意的に」行なわれてきたものである。つまり「大金持ちの減税」による税収のマイナスを「補う」目的で、極めて「詐欺的に」導入されたのが、日本の消費税なのだ。一方を増やし他方を減らすのだから、税収増はプラスマイナスゼロで「増税効果」すらない。それと同じことを民主党が今回、さらなる「法人税減税」とセットで行なおうとしているのは、皆さんも既にご存知のとおりである。

       所得税    住民税    合計
昭和49年  75%    18%    93%
昭和59年  70%    18%    88%
昭和62年  60%    18%    78%
昭和63年  60%    16%    76%
平成元年   50%    15%    65%(※この年に諸費税が導入された)
平成7年   50%    15%    65%(※最高税率適用額を2千万に引き上げ)
(※平成9年消費税が5%に上げられた)
平成11年  37%    13%    50%
所得税の最高税率の変遷(財務省)より

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上に掲げたのは、財務省による「国民所得に占める税収の割合と税目別の比率」をグラフにしたものである。

まず日本は「税収対所得比率」がスウェーデンの半分である(日本24.6%、スウェーデン47.7%)。所得額に占める所得税の割合は日本の税制では7.6%、スウェーデンでは19.9%である。このことはスウェーデンで如何に所得税が重要な税源であるかを示している。一方消費税の比率はスウェーデンでは17.4%と、日本の6.9%に比べこれも確かに高い(尤も構成比で見るとそれほど差はない)。

上記の平野貞夫氏は、スウェーデンの消費税の対所得比率が高いこと「のみ」をことさら抜き出して 「歴史の必然」と強弁し、まず姑息な「印象操作」を行なっているものと思われる。

しかし問題は「所得税」の「中身」である。つまりスウェーデンの莫大な税収の、そのまた19.9%を占める「所得税」が「高度の累進税率」によるものだということを巧みに「隠蔽」しているのだ。早い話「金持ち」からの税金が「貧乏人」からの税金より多いのが、スウェーデンの「所得税収」なのである。そしてそれは消費税の「逆進性」をも「緩和」する作用があるということを意味する。私はこのことを以前「高度の累進課税を採用している場合は消費税がたとえ50%であったとしても『逆進性=不公平感』」は生じないのである。」として、以下のエントリーで既に明らかにしている。

<スウェーデンの消費税と日本の消費税の違い>
http://takashichan.seesaa.net/article/131111412.html?1280629219

実は、所得税が「総額でどれだけ課せられているか」ではなく「どのように課せられているか」が本来最も重要なのであるが、例によって奴のヨタ話の中では、その論議がすっぽりと抜け落ちている。いつもながら支配層に都合の良い「つまみ食い」というわけだ。

> 大量生産・大量消費という経済構造はいつか必ず転換を迎え、選択的生産・選択的消費という成熟した経済構造へ変化する。いわば、経済の中心は企業主体の重化学工業から個人の多様な消費とそれに応じた生産という情報産業へと転換していくことになる。このときに、法人税・所得税という直接税に依存していては税収は必ず破綻する。間接税によって税金の最大の目的である所得再分配を行うことが必要となる。

これは話のつじつまが全然あっていない文章である。「大量生産・大量消費という経済構造はいつか必ず転換を迎え、選択的生産・選択的消費という成熟した経済構造へ変化する。いわば、経済の中心は企業主体の重化学工業から個人の多様な消費とそれに応じた生産という情報産業へと転換していく」と、何故「法人税・所得税という直接税に依存していては税収は必ず破綻する」のか、何の説明にもなっていない。要するにあってもなくてもどうでもよい文脈。まるでネトウヨの文章にそっくりだ。

>平野 大きく二点を上げると、第一に、高所得者より低所得者の税負担が大きくなること(逆進性)、公平さが確保できないことだ。消費税に一律の税率を設けることには反対だ。
生活必需品への税率と毛皮やダイヤモンドのような奢侈(しゃし)品への税率が同じというのはおかしい。戦前には芸者への花代には30%の税がかけられたし、遊郭で遊べば200%の税がかけられた。富裕層が贅沢を楽しみたいのなら、それなりの税を負担してから楽しんでくれ、という「奢侈税」の思想があった。このように、物品によって税率に弾力性を持たせることによって、消費税による所得の再分配を行わなければならないのだ。

「高所得者より低所得者の税負担が大きくなること(逆進性)、公平さが確保できないこと」「生活必需品への税率と毛皮やダイヤモンドのような奢侈(しゃし)品への税率が同じというのはおかしい」のであれば、消費税を廃止して「物品税」を復活させればよい、ただそれだけのことだ。

この男の言っていることは、貧乏人を騙すにしても、余りにもお粗末で底の浅い「詭弁」である。


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posted by takashi at 16:35 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時事、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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