2010年03月19日

日本が滅びるとしたら

何十年も前、有名な広瀬隆氏の本を読んで、原子力発電(所)のことをずいぶんと知った。私の世代にはそういう方は多いのではないかと思う。広瀬氏の著書に書かれていたことで、印象に残っているのは次のようなくだりだっだ。つまり「原子力発電と言えば何か、とてつもない高尚な技術のように思うかも知れないが、何のことはない、原発とはただの『原子力湯沸かし器』に過ぎない」。要するにタービン(蒸気機関)を回すための「水蒸気」を発生させるのに、石油や石炭のような安全な燃料を使うか、核物質のような危険な燃料を使うかの違いであって、回すタービンそのものには何の違いも無い、ということなのである。

石炭や石油は「素手」で触っても人体には何の「害」もないが、核物質は触れた途端「被爆」する。だから核物質を扱うのは「マジックハンド」である。素手ではないから「人為的ミス」は格段に多くなる。いったん事故が起きたら「事故対処用のマジックハンド」などありはしないから、どうなるかといえば人間(普通は電力会社の孫請け以下の会社のそのまた請負作業員)が「犠牲」にならざるを得ない。その核物質が「暴走」して炉心を「溶融」させないために「水」を使うが、その水にも核物質の「毒」が回っているために「素手」で扱うことは出来ない。何年か前に東海村で、この「核汚染物質」を「素手とバケツ」で処理して、亡くなった作業員が二人いた。一般報道では殆ど書かれていなかったが、この二人の犠牲者の死体の「病変」は凄まじいものだったと言う。

その危険な原子力発電所の中でも特に危険な「高速増殖炉原子力発電所もんじゅ」が運転を再開されようとしている。十五年前に大事故を起こし、世論の反対によって運転を休止していたシロモノである。

「放射能事故」が何故恐ろしいかといえば、それは他の事故との決定的違いがあるためである。つまり放射能事故には「終息」が無いのである。いったん汚染が起きたらその放射能が「半減」するまでに数万年を要するのだ。そんな危険な放射能を出す物質は、是非とも元あった地中深くに戻してやらねばならないが、この「地上」でいったん事故を起こしてしまった後ではもう遅い。人間が生活するその環境の中に無理やり持ち込まれた放射性物質は、もう人間による「制御」からは全く自由な「孤高の存在」である。

誓って言うが、電力会社の経営者は絶対に責任を取らない。電力会社の社員は、事故現場から遠く離れた(勿論「安全」では決してないが)東京で、コンピューターの前に座って「指揮」を取る。かくして「原発事故」が起きると、子会社、孫会社、ひ孫会社、そのまた請負会社・・・と無限の「なすり合い」が始まる。そして最後に、実際に防護服を来て「死の作業」を行なうのは「原発ジプシー」と呼ばれる「使い捨て労働者」たちである。もちろん「原発ジプシー」達が、チリトリとウェスペーパーで「気休め」の作業をしたところで「原発事故」には何の「解決」ももたらさない。「原発ジプシー」達の行なう「無駄な作業」は、50年前と全く同じ光景だ(注)。このような「無責任社会の縮図」とも言えるのが、まさに「トイレの無いマンション=原子力発電」の世界なのである。

私は何年も前から言い続けているのだが、もしこの日本という国が滅びるとしたら、その原因は北朝鮮の核ミサイルでもなければアメリカの核ミサイルでもない、勿論中国のそれでもない。間違いなく日本は日本国内の「原発」によって滅ぶ、のである。かのチェルノブイリの汚染地域の直径範囲の中に、日本列島はすっぽりと入る。チェルノブイリは未来永劫「住めない土地」である。

さて「地震」「テロ」「人為的ミス」・・・これほど「破滅の好条件」が揃った国は世界中にないのではないか?我が国の原子力発電所の安全部門に、あのスプリングフィールド原子力発電所で働いているホーマー・シンプソンのような「不良社員」がいないと、各電力会社は自信を持って言い切れるのかどうか?(笑)。あらゆる可能性を複合的に判断すれば、我が国に「致命的な原発事故」が起こる確率は100パーセント、国内に140基程ある原発の殆どが「老朽化」しつつある現在、その時期は年々近づいている。願わくば、どうか「原発事故」は、私が死んでから起きて欲しいものだ。「我亡き後に洪水よ来れ!」である。後は頼みますよ、お若い衆(笑)。

homer.jpg


(注)「原発ジプシー」堀江 邦夫 著
http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%B8%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%BC-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%A0%80%E6%B1%9F-%E9%82%A6%E5%A4%AB/dp/4061833545
<参考サイト>
良く分かる原子力
http://www.nuketext.org/roudousha.html

posted by takashi at 12:23 | Comment(27) | TrackBack(1) | 時事、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「不勉強」です。

被曝による病変…ちょっと調べてみましたが、強い放射線を受けると冗談抜きでDNAレベルで遺伝子が破壊され、正常な細胞がつくられなくなるとか。よって致死量の放射線を浴びた場合、多臓器が急速に壊死・出血し、もがき苦しみながら死を待つしかなくなる…
即死レベルでなくとも不正常な細胞や血液ができる=がんや白血病その他諸々の病気を誘発、さらには遺伝子異常は次なる命にも間違いなく大きな悪影響を及ぼす…詳しい情報は「原爆症」や「チェルノブイリ」などで調べれば相当数見つかりますね。
原発一基の事故でばら撒かれる放射性物質は、万単位で原爆症患者を生み出した広島型原爆の200〜500倍だとか。うーむ、何人殺せるのだろう。

近年は特に大手企業での大事故や不祥事などが目立ちますが、その背景には「効率化」の名の下、安全性を度外視した仕事をさせたり、人材への十分な投資を行っていないことなどがほぼ共通にあります。
東海村の臨界事故は「業務の効率化」の名目のもと、正規の業務手順を無視した「裏マニュアル」によるずさんな作業を行っていたことが背景にあるそうですね。取り返しのつかない事態と隣り合わせゆえ、最大限の安全を確保しなければならない原発の現場ですら、そんなものです、、、

さて「温暖化対策」のために、2030年までに原発14基の新設と全体の稼働率UPを行う話が政府の中で進んでるらしい。つまり「破滅」のリスクは今後ますます高まっていくということをも意味するのではないでしょうか。
原発事故が一たび起これば大量に人が死に、周囲数10kmから人が引き払った後は数10年かけて自然の生態系が回復していきますから、確かに「温暖化対策」として原発は非常に「効率的」なのかも知れません(爆)
Posted by 不勉強 at 2010年03月20日 16:49
不勉強さん、

>DNAレベルで遺伝子が破壊され、

なるほど、ぶさよでょっくは放射能を浴びたのですね(笑)。
Posted by たかし at 2010年03月20日 19:46
たかしさん、

その「放射能」が強力だと、無差別殺人すら正しいことだと信じ込んでしまうほど「人間性」のDNAが破壊されてしまうこともありますから。
さらに放射能を浴びた物体はそれ自体が放射能を放つようになります…
ぶさよ氏などはまだ軽いほうですよね。
(変な謎掛けスイマセン、あのカルト教団のドキュメンタリー番組をちょうど見てました。このコメントはその影響です(苦笑))

尤も、我々も「そうなる可能性」がないわけではないと思いますので他人事とせず、「放射能」を知らず浴びていないかどうか、都度自らを省みなければなりませんね。
Posted by 不勉強 at 2010年03月20日 23:11
>日本が滅びるとしたら・・・
中国や北朝鮮の侵攻を心底憂いておられる人達もいますよね(笑)。

寿命(耐用年数?)のせまる原子炉、寿命のせまる数多くのダム、、、
どないすんねん!ですね。


>>DNAレベルで遺伝子が破壊され、
>なるほど、ぶさよでょっくは放射能を浴びたのですね(笑)。
   Posted by たかし at 2010年03月20日 19:46

ま〜だ、そんな言い方をしてる〜!
しつこく言うなら、もっとハッキリした形でブログ間で解決をはかったら如何ですか!
和解とまでは行かずとも・・・。
いい大人が見苦しい!!
Posted by 山田の案山子 at 2010年03月22日 09:51
トラックバックありがとうございます。

ウラン採掘・精錬・転換・濃縮・再転換・成型加工、使用済み核燃料の再処理・輸送・保管、放射性廃棄物の処理・処分、高速増殖炉にプルサーマル、原発の運転だけでなく、核燃料サイクルすべてに危険がつきまといます。高速増殖炉「もんじゅ」にしろ、六ヶ所村の再処理施設にしろ、これだけトラブルが起こし続けたら、普通ならあきらめるべきなのに、いまだにあきらめない。多額の予算を投入し、計画を推進することで利益を得る政治家、官僚、企業、学者等が強力な複合体を形成しているからでしょうか?

私も堀江邦夫氏の『原発ジプシー』読みました。公式データでさえも、下請作業員が原発での圧倒的な放射線被曝を引き受けていますね。

私の実家は浜岡原発、現在住むところは川内原発、地震なども含め、大事故が起これば一巻の終わりの地域におります。まあ、日本全国、原発事故が起これば、安全なところはありませんが(沖縄ぐらいかね。しかし、沖縄には核兵器がいっぱいありますけどね)。
Posted by ecologician at 2010年03月22日 18:29
お初にお邪魔します。HNは、私の訪問先で共通して書いているものでして、書き捨て書き逃げの予備行為ではありません。

東海村の臨界事故については、NHKスペシャルでの追跡番組があって、それのほぼ全体の書き起こしが出版されています。ご参考まで。
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-005872-X
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0058720/

で、皆様のコメントを読ませていただいたのですが、ぶさよでぃっく氏がいかに唾棄すべき人物であるとはいっても、放射線による被曝と絡めての嘲笑は違うだろうと思います。ぶさよでぃっく氏は、まさに自身の反社会的行為が批判されている。他方、原爆での被爆にしろ、臨界事故での被曝にしろ、あるいは各地の原発で日々進む放射能汚染による被爆にしろ、その被曝者が責められる謂れはありません。この違いは大きいといわねばなりません。どうか皆様方には、嘲笑ももっとスマートになさるようお願いしたい。
Posted by つうこうにん at 2010年03月22日 20:12
ecologicianさん、良くいらっしゃいました。
反エコロジーの最たるものが原発です。これほどダーティーなエネルギーを「地球にやさしい」などと強弁する連中には本当に腹が立ちます。沖縄には現在、核兵器はまさか無いとは思いますが、明らかに「劣化ウラン弾」が存在しますね。

つうこうにんさん、
確かに「被爆者」とぶさよでぃっくを同列に置くのは不適切な表現でした。今も苦しんでおられる被爆者並びに原発労働者の方々に深くお詫びしたいと思います。申し訳ありませんでした。
Posted by たかし at 2010年03月22日 20:35
「不勉強」です。

つうこうにんさん、私もたかしさんのコメントに呼応した立場ですので、私からもお詫びいたします。

人が外的な要因で思考があらぬ方向へねじ曲がってしまう可能性と、ねじ曲がってしまった被害者自身が新たに加害者になっていく、そうした可能性が誰にでもあることを警告する意味合いをコメントに含ませたかったのですが、それを「放射能」に掛けたのは確かに軽率で不適切であったと思います。
原爆症など、放射線障害に見舞われた皆様方にお詫び申し上げます。
Posted by 不勉強 at 2010年03月22日 21:15
再び失礼いたします。

沖縄には核兵器がいっぱいありますけどね。
→沖縄には核兵器がいっぱいあり「え」ますけどね。

に訂正します。断定するのはまずかったですね。ただ可能性がなくなったとは思えないので。

この間、ブッシュパパ政権までは、「沖縄への核再持ち込み」を含む密約の存在があきらかとなって、確実に沖縄に核兵器が存在することが確認されました。クリントン政権時に核戦略転換があり(事実あったわけですが)、沖縄から核兵器が撤去され存在しないことに表向きなっているわけですが、本当にすべてなくなったのか?というのが疑い深い私の認識です。劣化ウラン弾はおっしゃるとおりです。
Posted by ecologician at 2010年03月23日 05:15
>>山田の案山子さん

>いい大人が見苦しい!!

→このブログでそんな"マトモ"なこと言ってると粛清されちゃいますよ〜。

 By粛清されかけのマトモな人より
Posted by shinystar at 2010年03月23日 10:37
おお、shinystarさん、忘れるところだった(笑)
復活のいい切っ掛けになりましたね。

サ〜〜〜〜て!
shinystarさんが出たら。アノ人も出てきますよね。
さ〜、はりきってど〜ぞ(藁藁藁〜〜〜っ
Posted by 山田の案山子 at 2010年03月23日 11:05
>>山田の案山子さん

>復活のいい切っ掛けになりましたね。

→あなたの"たかしズム度"が最近どうも足りないみたいだったので老婆心ながら呼ばれもせず忠告にきたのですよ。たかしズム内で"常識的"であることは罪ですらありますからお気をつけ下さい。他の常連さんたちみたいに頭のネジを5本くらいはずして常識と非常識の区別がよくわからなくなったぐらいがちょうどよいのです。私に指摘されなくても既に薄々ご存知とは思いますがね^^
Posted by shinystar at 2010年03月23日 12:39
>>shinystar

粛清?先天的ゴミクズ野郎がなーに言ってんだか。
オマエが「常識」を騙る滑稽さ(藁
Posted by うー at 2010年03月23日 15:14
>>うーさん

>粛清?先天的ゴミクズ野郎がなーに言ってんだか。

→「先天的ゴミクズ野郎」かwなかなか迫力のある言い回しですねぇ。うーさんに言われてもあまり説得力がないという点を除けば…。
Posted by shinystar at 2010年03月23日 15:43
嗚呼! こうしてまた、いつも通りのたかしズムに戻るのであった。
かんら、かんら〜!   ・・・そして、脱力のブレーン・バスター!
Posted by 山田の案山子 at 2010年03月23日 16:01
→このブログでそんな"マトモ"なこと言ってると粛清されちゃいますよ〜。

デマはやめましょうね。
Posted by あるふぁ at 2010年03月23日 17:28
原子力発電はCO2を出さないからエコ。
ならば、放射性廃棄物はエコ...........
な訳ないでしょ。
Posted by あるふぁ at 2010年03月23日 17:38
shinystarは今回もまた腹いせに言い返すだけで精一杯なのであった(藁
Posted by うー at 2010年03月24日 01:12
>>うーさん

>shinystarは今回もまた腹いせに言い返すだけで精一杯なのであった(藁

→別に腹いせで言ってるわけではないよ。どう捉えるかは賢明な読者諸氏(うー氏、あるふぁ氏を除く)がそれぞれ判断すると思ってる。
Posted by shinystar at 2010年03月24日 09:41
>By粛清されかけのマトモな人より

マトモをわざわざ自称する人が実はマトモではないんですね。
Posted by あるふぁ at 2010年03月24日 17:31
>>あるふぁさん

>マトモをわざわざ自称する人が実はマトモではないんですね。

→確かに「マトモをわざわざ自称する人が実はマトモではない」というケースは存在するでしょうね。但し私がそのケースかどうかはまた別の話です。「私は間違いなく日本人だ」とわざわざ発言する人が「実は日本人ではない」ケースは確かにありえますが、また一方で「事実日本人である」というケースもあるのと同様です。ちなみに私の場合は後者のケースに当てはまります。
Posted by shinystar at 2010年03月25日 18:15
ココでも、おバカな会話が続いていますね(失笑)。

スレ・タイトル『日本が滅びるとしたら』は、いいのですが。
コメント欄はどこも貧弱ですね。
『たかしズムのコメント欄が滅びるとしたら』で新しいスレッドでもお願いしましょうか。
Posted by 山田の案山子 at 2010年03月25日 18:21
結果として貧弱さを助長している張本人の一人が言うのもなんですが、コメ欄での自由な会話の帰結ですからある程度はやむを得ないのではないかと私は思います。そのような流れが嫌ならブログ主が本題に戻すよう仕切ればいいわけです。(最悪強制的に該当スレをクローズするなど)

※自由なコメ欄がある点は当ブログの魅力でもありますので諸刃の剣ですね。
Posted by shinystar at 2010年03月26日 12:27
安全性がないのならこんなに原子力発電は普及していませんよ?
放射能漏れの危険性をしきりに煽っていますが、現在の高度に発達した管理システムでは、放射能漏れまでに至る可能性は限りなくゼロに近いのです。テロや天災、人為的ミスによっても同様です。
ああ、それからマジックハンドは人間と手よりもずいぶん優秀ですよ。断言します。医療現場での活躍がそのいい例ですね。
もっとも、機械化された装填システムでマジックハンドなんて使うのかどうかは答えかねますが(笑)

どうぞ沢山の本を読んでください。
Posted by K at 2010年03月29日 16:31
山田の案山子さん

>『たかしズムのコメント欄が滅びるとしたら』で新しいスレッドでもお願いしましょうか。

ご自分で
「山田の案山子ズム」ウェブにはびこる良識無き者どもを滅多切り!
でも開設されたらいかがですか?
Posted by あるふぁ at 2010年03月29日 17:37
>ご自分で
「山田の案山子ズム」ウェブにはびこる良識無き者どもを滅多切り!
でも開設されたらいかがですか?

あら!「良識無き者ども・・」御自覚が(笑)。
Posted by 山田の案山子 at 2010年03月29日 21:27
>現在の高度に発達した管理システムでは

運転再開した「もんじゅ」のトラブル続きを見る限り「現在の高度に発達した管理システム」ってのは
お笑い以外の何者でもないですね。
Posted by あるふぁ at 2010年05月13日 17:12
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