2009年08月06日

日本に福祉社会が実現しない理由

今日は先日<ほくそ笑む日本の金持ち達>のコメント欄に私が書き込んだ文章を、以下エントリーに格上げして「茶を濁す」ことにした。

私が最近思うことは、日本の社民主義政党には「社会民主主義」の世の中は作れないのじゃないかということです。作れるのは共産党だけじゃないかと。そのように思う「根拠」があります。実はスウェーデンでは保守派のキリスト教民主党から社会民主党、左翼党まで、つまり右から左まで全ての政党が「社会福祉」を第一の政策に掲げているのです。そうでなくては国民の支持が得られないからです。

それに対し日本ではどうかと言うと「高福祉」は左翼政党だけの「専売特許」なのです。右に行けば行くほど「社会福祉」が確実に「無視」され「後退」するのです。しかも日本には左派・中道政党がぐいぐい保守(=右)に引っ張られるという現象があります。日本の社会民主主義政党は「すぐに右傾化する」という性質を持っているわけです。これは戦前の「社会大衆党」戦後の「民主社会党」「社会党」現在の「社民党」まで一貫した特徴です。

何と言ったらいいのか、政党の「立ち位置」が西欧とは「一メモリずれている」感じでしょうか?ぶれないのは共産党一党のみです。結論を言うと日本の社会民主主義政党には「社会民主主義」の世の中は作れないということになります。つまり、共産主義を目指す過程において一時的に形作られる「経過的」政治体制としての「社会民主主義」(=日本共産党言うところの「資本主義の枠内での改革」)に頼るほかに方法はないのではないか?これが最近の私の頭の中にある日本の将来の予感・展望です。

少なくとも社民党には過度の期待はしないほうが良いでしょう。民主党、公明党、自民党にずるずる引っ張られます。過去を見れば明らかです。
ついでに日本とスウェーデンの個人所得税制の違いを簡単におさらいしてみます。

<日本の税制>
・累進課税が緩い
・最高税率が低い
・課税最低限が低い
お馴染の「金持ちが保護されて、貧乏人が虐げられる税制」です。

<スウェーデンの税制>
・累進課税が急
・最高税率が高い
・課税最低限が高い
「応能負担で、弱者が保護される税制」です。

スウェーデンで意外なのは、法人税率が低いということ。それは、福祉社会の一方の担い手である「企業」の健全化(設備投資など)と社会的責任(未来への存続)を、国家が第一に考えていることの現れです。その背景に、企業に対する「性善説」があります(もちろんこれは日本の企業には通用しませんが)。ただし注意しなくてはならないのは、日本では企業・社員折半である「社会保険料」がスウェーデンでは全額企業負担であること。それを法人税にプラスすると実質法人税率は、日本より高くなるのです。

スウェーデンで特徴的なのは、法人税率が低い代わりに(とはいえ実質は日本より高いのは上で述べましたが)、企業の「儲け」が、役員報酬・賃金・給与その他の「個人所得」にまわされた時点で「所得の再配分」が平等に行なわれるという仕組みがかなり以前から確立されているということです。その結果、個人レベルで「可処分所得が平準化」(例えば労働者と経営者間で=よく言われるのが、大企業の社長とその会社で働く掃除のおばさんの生活水準がそんなに違わない等)される。このサイクルが、実にうまく機能しているのがスウェーデンという福祉国家なのです。

これがスウェーデン型福祉社会の仕組みです。なおスウェーデンにおける「福祉国家」の定義は「国家の存在理由が、社会福祉ただ一点にある国」だということです、素晴らしいですね。
posted by takashi at 16:35 | Comment(3) | TrackBack(1) | 時事、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本の税制がいかにクソなのかが分かります。
税制と労働環境が劣悪過ぎる日本って一体何なのでしょうかと思ってしまいます。

唯一まともな主張をしてるのが、日本共産党だけなのは寂しいですよね。
そのまともな主張が広告代理店や財界企業のせいでまともに伝わらないようになってるのは腹立たしいです(主張には?な部分がありますが、これは国民新党と社民党にもいえます)

税制を改め、もっと暮らしやすい国に日本が変貌してほしいです。
その為には共産党がもっと伸びて欲しいです。
選挙権を得てから共産党一筋に投票してる私からの願いです。
Posted by コンポコ at 2009年08月06日 18:34
このような事態を招いた一因は、連合に問題があるのでしょうね。

本来なら労働者の代表として、資本家と対峙すべき団体が、
正社員の雇用の確保という美名の元に率先して経営者側が推進するリストラに荷担していました。
私自身は経団連と連合はかっての自民党と社会党のように
裏でつながっているのではないかという疑念を拭えないままでいます。

そんな団体から献金を受けている社民党が、本来共闘してしかるべき
共産党との間で連合の取り扱いの点で
反目することは当然であって、
その点を解決できないことこそが
日本の左翼勢力の弱体化を招いているのではないでしょうか?

しかし日本の税制と、社会保障の関係ははあまりに惨い。
やらずぶったくりと評価されても仕方がないですね。
Posted by nao at 2009年08月06日 23:00
現在、連合の献金はそのほとんどが民主党に回っています。社民党がどの程度受けているのか分かりませんが、そうたいしたした金額ではないと思います。社民党はその意味で「金蔓」の最も乏しい政党と言えるでしょう。「政党助成金」という謂わば「生活保護」に頼っている政党です。ちなみに自民党など、企業献金を貰いつつ政党助成金を貰っているわけですから、言ってみれば株で悠々と生活しながら「生活保護」を受給しているようなもんです。

きっこのブログは共鳴することが多いのですが、ちょっと「オムライス党」に入れ込み過ぎのようです。先日もこんな記事が載っていました。
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/08/post-149c.html
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選挙後の議席数が、「民主党だけだと過半数に足りないけど、オムライス党を足すと過半数を超える」とか、「オムライス党を足すと3分の2を超える」とかって形になれば、民主党がどんなにふざけた法案を出そうとも、オムライス党の賛成がなかったら可決されない。
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って、そんな「ふざけた」法案ならオムライス党が反対する前に自民党が賛成して、すんなり通ると思いますね(笑)。
Posted by たかし at 2009年08月07日 08:08
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