よく言われることで「その国の弱者に対する扱いを見ればその国の価値が分かる」というのがある。
これはまったっくそ通りだと思う。数日前、ケーブルTVでマイケル・ムーア監督の「シッコ」をやっていたので見た。この映画はムーアの作品の中でも最高の出来だと思った。アメリカの病巣を象徴的に描ききっている。カナダ・ヨーロッパと比べてアメリカ社会が如何に人道的に劣っているかを暴いている。それにつけても映画の中で、新自由主義で後退したとばかり思っていたイギリス・フランスの社会福祉が、未だに素晴らしく健全なのを見せつけられて驚いた、私の認識不足だった。恥ずかしい。両国とも医療費、教育費はタダだというのだ。お産のときの休暇や給与補償、引っ越しのための2日の休暇なども法律で与えられる。日本と違い出生率が回復するのも当然だ。しかもマイケル・ムーアが訪れたのは北欧ではない、アメリカ人のふるさととも言うべきイギリスである。そのイギリスでは、救急車を呼んでも金を請求されるわけでもないし、金の払えない病人を病院が救貧施設の前に放り投げることもない、既往症で保険料が何十倍に増えるような「医療保険」もなければ、保険会社の差し金で末期がんの患者が治療をストップされることもない。
圧巻なのは映画の最後に、9.11の現場復旧作業に参加したためにひどい後遺症に苦しむ元レスキュー隊員やボランティアたちを、こともあろうにアメリカが目の敵とし、あらゆる経済制裁で苛め抜いてきたキューバに連れていく場面だ。そこでの医療の手厚さに涙する彼らの姿は感動的だった。
さてわが祖国日本である。
映画で描かれていたカナダ・ヨーロッパと、アメリカのどちらにより近いだろうか?
さすがに救急隊員が患者を路上に放り投げたというニュースはこれまでなかったように記憶しているが、今の日本の現状はアメリカに、より似通っているように私には思える。少なくとも実態は明らかにアメリカに近づきつつある。健康保険の滞納者から保険証を取り上げることを、アメリカでは医療保険会社がやっているが、日本では地方自治体が行なっている。
先日、介護報酬の3パーセントほどの引き上げが決定されたが、その裏で厚労省が帳尻合わせに、要介護認定を厳しくするよう自治体に通達を出していた内部文書が「しんぶん赤旗」で暴露されていた。この国でも社会的弱者は徹底的に苛められている。
私は障害者福祉というものは元来、マイナスをゼロにまで引き上げるものであり、健常者のそれとは違うと思っている。当然前者は優先されてしかるべきである。
少数(老人・障害者)の権利を奪っている社会は大多数の権利を奪う社会になっていく。最後にドイツのニーメラー牧師の詩をウィキペディアから引用しておく※注。
彼らが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった、
(ナチの連中が共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった、)
私は共産主義者ではなかったから。
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった、
私は社会民主主義ではなかったから。
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった、
私は労働組合員ではなかったから。
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彼らがユダヤ人たちを連れて行ったとき、私は声をあげなかった、
私はユダヤ人などではなかったから。
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そして、彼らが私を攻撃したとき、
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。
※注)ウィキペディアについては以下を参照のこと
<ウィキペディアの問題点>
http://takashichan.seesaa.net/article/105494400.html
わたしも「シッコ」見ましたよ
ところでグアンタナモは名古屋弁みたいな刑務所だなも