2008年11月12日

「所得再配分」について

今の日本社会のキーワードは何か?と問われたら私は「所得再配分」と答える。それほどこの五つの漢字が重みを増して来たように思えてならない。
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「現行の社会保障は所得再分配の効果も担っている。」

独立行政法人経済産業研究所(RIETI) - 2008年11月5日
http://www.rieti.go.jp/users/oguro-kazumasa/serial/002.html

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その社会保障を「逆進性」の消費税で賄おうという発想自体が「本末転倒」なのである。しかも消費税増税の税収が本当に社会保障に回るかなど、何の保証もありはしない。少なくとも過去においてはその税収がそっくりそのまま「大企業の法人税減税」に回された実績を、我々はよく注意してみる必要がある。一方で2200億円もの社会保障費が毎年毎年、前年度より削減されているのを見れば、自公政権の欺瞞性は明らかだ。

これまで私はいろんな所で述べてきたが、ヨーロッパの税制と日本の税制の大きな違いは次のところにある。一言で言えばEU諸国の税制は基本的に「累進課税」であり、日本のそれは「擬似累進課税」だと言うことなのだ。実は日本の税制も以前は「累進課税」であった。その指針とされたのが「シャウプ勧告」というものである。シャウプ勧告が無謬であったとは言わないが、現在の日本の税制がこれほど「不公平」なものに至った理由はシャウプ勧告からの逸脱にあると見てよい。有価証券所得への過度な優遇、最低税率・課税最低限の引き上げ、最高税率の引き下げ、累進課税を緩和しつつ「消費税」に代表される逆進性の「間接税」を導入するなど、税制の本来の機能「所得の再配分」を否定する方向で今日に至っている。

かつて我国には「物品税」と言う間接税があったのをご存知であろうか?税率は10パーセントから30パーセント、「宝石」「毛皮」など、一般に高額所得者でなければ買えない物品にのみ課せられていた。そのときの情勢によって物品ごとの税率は柔軟に変えることが出来、低所得者でも購入が可能となった物品は課税対象からはずすことも行なえた。これほど合理的である意味「累進性」も兼ね備えた税体系を何故葬り去って「消費税」に進んだのか、私は今でも不思議でしようがない。私は以前に次のように書いたことがある。
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<たかしちゃん語録その2>より
http://takashichan.seesaa.net/category/5667836-1.html

アメリカの社会福祉は「自己責任型」、すなわち弱い者(貧者)は満足な福祉が受けられない。自公政権の下で、日本はそれに習いつつある。戦後やっと手に入れた数々の権利を、ここ十年ほどで、国民は次々と手放させられている。アメリカには消費税がない。なぜこれは見習わないのだろう。消費税といえば今から20年前、自民党が国民をだましてこれを導入するときに、いったい何と言ってこれを行なったか?「薄く、広く、公平に」である。
「薄く、広いからこそ不公平」だと、最初から気が付いていた国民は、ごく少数であった。さらに、狡猾な自民党は、次のようなことをのたまった。「北欧の福祉国家では消費税率が20数パーセントもある。日本も福祉国家を目指すならば消費税が必要だ」。これにも日本国民はすっかり騙された。北欧の社会福祉の充実は、消費税などではなく「高度の累進課税による所得税」が源泉である。日本の有権者はそのことを知らないのだ。
逆説的な話になるが、累進課税により「可処分所得が平準化」されると、実は消費税のような間接税も平等に作用してくるのだ。小学生程度の算数でもわかることである。その結果、所得税について言えば、自民党の目論見どおり、長年培われてきた「シャウプ税制」が見直され、累進課税が緩和された。そこに消費税が加わった。つまり北欧社会福祉国家に習うどころではない、全く逆のことをやってのけたのだ。
ついこの間まで「北欧は社会福祉で財政が疲弊している」だの「福祉が充実している国は、国民が怠惰である」だの「北欧は老人の自殺が世界一」だの「ビョルン・ボルグは税金払うのが嫌でスイスに逃げた」だのの嘘っぱちのプロパガンダを、言いたい放題垂れ流していたくせに、今度は、北欧の福祉国家に「習って」消費税を上げると言うのだ。ご都合主義もいいところである。

第一、過去にいちども「福祉国家」を経験してもいない日本という国が、何十年も前に「福祉国家」を「実現した」スウェーデンを「怠惰」呼ばわりは、いくらなんでも失礼であろう。全国の貧者たちよ!そろそろ敵の策略に気が付こうではないか!
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法人税率の引き下げについては、私は必ずしも反対ではない。しかし「大前提」がある。「出口を狭める」と言うことである。早い話が個人所得税の段階で適正に「所得の再配分」が行なわれると言う大前提が必要である。これなしの法人税率の引き下げは「言語道断」である。確かにスウェーデンの法人税率は日本のそれよりは低い。が、個人所得の段階で「所得の再配分」が達成されている。

なお、スウェーデンの法人税率は日本のそれよりは低いと申し上げたが、日本では労使折半の社会保険料が、かの国では全額企業負担であって、これを法人税に加算するとスウェーデンの実質企業負担は日本よりも高くなる。

このように「スウェーデンの法人税率は日本のそれよりは低い」は、自民党の卑劣なプロパガンダなのである。要するに、<たかしちゃん語録その2>で述べた「消費税」導入時の「詭弁」と同じレベルの悪質なデマなのだ。ところで「定額給付金」の話題で陰に隠れてしまっている観があるが、次のような記事がasahi.comに出ていた。
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高所得者の課税強化 自民税調が「格差是正」検討   
   
 自民党税制調査会は将来の消費増税に合わせ、高所得層の所得税引き上げや相続税強化、低所得層の税負担軽減などの「格差是正税制」の検討に入った。消費税は「所得が低いほど負担が大きい」との批判があるため、高所得者らへの課税強化で不満を抑える狙いだ。  自民党税調は12月中旬をめどに、今後の消費増税などの道筋を示す「中期プログラム」を作る方針だ。プログラム策定は、麻生首相が10月30日に発表した新総合経済対策で打ち出したもので、党税調がとりまとめる。
 首相は「景気状況を見たうえで、3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」としているが、消費増税には批判が根強い。所得に関係なく、一律に生活必需品や食料品にかかるため「低所得者ほど重税感が強まる」との指摘があるほか、小泉政権以降の「格差拡大」への批判も強まっている。党税調のなかには、こうした批判に配慮し、所得税や相続税などの改正も同時に打ち出す必要があるとの意見が出ている。
 所得税では、課税所得のうち1800万円を超える部分にかかる最高税率を現在の40%から引き上げる案などが浮上。過去の税制改正では、所得が高いほど税率が上がる累進課税を弱める傾向が続いてきた。この案が実現すれば、転換を図ることになる。一方、低所得層に対してはさらに税負担を減らす案が出ている。
 相続税は課税強化を検討。遺産にかかる課税最低限(5千万円に、法定相続人1人につき1千万円を加算)の引き下げや最高税率の引き上げなどが議論されそうだ。
 法人税の引き下げも検討する。国・地方合わせて約40%になる法人税などの実効税率が諸外国より高いとの批判が経済界からあるためだ。企業向けの租税特別措置の整理も進める。個人、法人にかかる税を見直し、抜本的な税制改正を議論する。
 党税調では新総合経済対策に盛り込まれた減税策もとりまとめる。過去最大級となる住宅ローン減税については、11日の総会で柳沢伯夫・小委員長が国税の所得税だけでなく、地方税の住民税も対象に含め、減税効果を高めることを提案。減税による地方自治体の減収分は国が補う考えも示した。(山川一基)

2008年11月12日3時4分asahi.com
http://www.asahi.com/politics/update/1111/TKY200811110330.html

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自民党税制調査会の本当の「狙い」は何処にあるか?我々有権者はよく吟味するべきであろう。

かさねて言うが「スウェーデンの法人税率は日本のそれよりは低い」そのものが、自民党の卑劣なプロパガンダであることをまず肝に銘じるべきである。
posted by takashi at 21:16 | Comment(0) | TrackBack(3) | 時事、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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